勉強するうえでややこしい別表4の事業税のカラクリ

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勉強するうえでややこしい別表4の事業税のカラクリ
法人税の申告を自力でやろうとする理解に苦しむのが「事業税」です。
素人的には「法人税・法人地方税・事業税・法人住民税」はすべて一緒に考えたくなりますが。事業税だけは別扱いにしなれければなりません。
これが別表4の難易度格段にむずかしくしている元凶だと思います。
ややこしい理由①:事業税だけ損金算入可
事業税だけ別扱いにしなければならない理由は「損金算入可」であるためです。
そのため別表4においても加算の項目に法人税・地方税・住民税は登場してきます。
※加算
・損金経理した法人税および地方法人税(附帯税を除く)
・損金経理した道府県民税(利子割額を除く)及び市町村民税
・損金経理した納税充当金
一方で事業税は「減算」項目に登場します。
※減算
納税充当金から支出して事業税等の金額
そのため
・「法人税・地方税・住民税」→同じ扱い
・「事業税」→別に考える必要がある
ということになってきます。
さらにややこしくするのが事業税は損金算入が申告書を提出された日の事業年度にするという「申告納税方式」になっている点です。
ややこしい理由②事業税の損金参入時期(前期分と中間分が今期損金算入、確定分は来期損金算入)
申告書を提出された日の事業年度に損金算入するということは以下になってきます。
出典:税理士試験教科書 法人税法Ⅱ 基礎完成編 2020年度
通常前期の確定申告を今期します。そして中間納税も今期します。そして今期の確定申告は来期します。
つまりは事業税は以下になるということです。
※今期に損金処理するもの
・前期の未納分
・今期の中間納税分
※来期に損金計上するもの
・来期に納税する今期の未納分
つまりは法人税・法人地方税・法人住民税は今期の税金について処理をするのに、事業税は、中間納税分を引いた前期分と今期の中間納税分の処理をし、今期の中間納税を除いた分は来期分で処理をしなければならないというめんどくさいことになります。
さらにややこしくする記入方法
中間分の事業税と期末の確定する分の事業税の納税充当金は、正しい理解がないと混乱しがちになってしまうので注意が必要です。
具体例①中間期:法人税・地方税・住民税は加算処理するが「事業税は何もしない」
法人税20万・法人地方税5万・法人住民税3万・法人事業税2万を「損金経理して」中間納税した場合法人税・法人地方税・法人住民税は損金不算入になので加算します。
よって別表4の加算の欄にそれぞれ
・損金経理した法人税および地方法人税(附帯税を除く) 25万
・損金経理した道府県民税(利子割額を除く)及び市町村民税 3万
と記入していきます。これは全く問題ない簡単な作業です。
がしかし事業税の2万の扱いは面倒です。この事業税2万は会計上今期費用計上し、税務上でも今期に損金処理できるものなので別表4で調整する必要がありませんので
事業税については記入不要。
となってきます。正しい理解がないと事業税は減算のところに書く必要があるのでは?と思ってしまいます。
具体例②期末:事業税分も「経理処理をした納税充当金で加算処理」する
さらにややこしいのは期末の処理です。
今期払うべき中間を除いた期末の税金が法人税20万・法人地方税5万・法人住民税3万・法人事業税2万の合計30万であった場合で考えます。
その場合、これらの合計30万は会計上では今期の費用として以下で処理します。
法人税等 30万 / 未払い法人税等 30万
この場合の別表4の処理の仕方は加算処理で、
経理処理をした納税充当金30万(加算)
となります。
この30万の内訳は上であるように以下です。
法人税20万
法人地方税5万
法人住民税3万
法人事業税2万(事業税なのに加算処理します)
事業税は減算ではないの?と思うかもしれませんが、会計上は事業税分を納税充当金で費用計上しているが、税務上今期に損金計上すべきものではないので加算処理することになります。
このようによくよく理解しておかないと頭に??が浮かんでしまいます。
この本にも以下のように書かれています。
出典:基礎の基礎 1日でマスター法人税申告書の作成
この本は、必要最低限しか説明がありませんので法人税申告書の基礎を学ぶにはとてもよいです。
通常の法人税申告書の書き方の本は、無駄にいろいろ入った説明がされます。逆に初心者にはわかりずらくなりますが。こちらの本はシンプルでおすすめです。
まとめ
根本を理解してしまえば、なんてことないことかもしれませんが、会計を学ぶ初心者には事業税は扱いにとても困ります。事業税の存在だけで難易度が飛躍的に上げてしまっていると思います。
事業税は以下の3点において法人税・法人地方税・法人住民税より処理が複雑になります。
・他と違い損金算入可
・他と違い、前期と中間納税分だけを今期で計算
・会計処理によっては減算処理する必要なない
・事業税は減算処理だが期末の事業税納税充当金分は加算になる
統一してくれれば簡単なのに・・と思いますが、消費税の軽減税率よろしく日本の税制は「簡単なことを難しく」が合言葉になっているので期待するのは酷です。自力で理解しにいくしかありません。
暗記で「事業税=減算」とだけ覚えていると対応できません。会計上の利益と税務所の利益の関係を理解できていないと事業税の処理ができない仕様になっています。
がこの点を理解できると法人税申告書は自分で作成することが容易になりますので、時間をかけても理解する価値があると思います。
法人税申告書が自分で作成できるようになれば、ざっくり年間40万~がずっと「0円」にすることができます( ̄ー ̄)ニヤリ
勉強に当たっては以下を利用しました。法人税申告書の書き方の本をよりも税理士試験の法人税を勉強した方がわかりやすい事実に気が付きました。
3-4 租税公課の損金参入時期からです。