法人住民税・事業税の分割基準(計算の仕方)~期中で登記住所を移動した場合~

目次
法人住民税・事業税の分割基準(計算の仕方)~期中で登記住所を移動した場合~
期中で登記住所を移動した場合の県に納める法人住民税・事業税の計算の仕方をまとめておきます。
期中で法人の登記住所が「他」都道府県に移動する場合は納めるべき税金を「移動前の都道府県」と「移動後の都道府県」に分割して納める必要がでてきます。
その場合、法人住民税・事業税の分割した金額をどうやって計算するか?を具体的に私の事例をもってご紹介させていただきます。
この分け方を「分割基準」と言っているようです。
分割基準は以下のように業種によって計算方法が違います。私の会社は非製造業です。非製造業の場合での分割基準になります。
業種 | 分割基準 |
---|---|
ア 非製造業 (下記イ~オ以外) |
事務所等の数と従業者の数 |
イ 製造業 | 従業者の数 |
ウ 倉庫業・ガス供給業 | 有形固定資産の価額 |
エ 電気供給業 | 有形固定資産の価額と発電に使用するものの価額 |
オ 鉄道事業・軌道事業 | 軌道のキロメートル数 |
要は非製造業の場合は「事務所の数」と「従業員の数」で納めるべき税金を決めるということになります。
私は2018.10~2019.9の事業年度において、2019.9.27に法人の登記住所を変更しました。あと3日で来期というところで変更しました。
3日待って10/1にすればよかったと反省しています。そんなことは言ってもしょうがありませんので具体的にご紹介させていただきます。
1年の案分の仕方(1月単位で計算)~例)11か月と1か月というように計算~
2018.10~2019.9の事業年度において、2019.9.27(11か月以上12か月未満)に法人の登記住所を移動させた場合は
税法的に
移動前の県に11か月
移動後の県に1か月
として計算していきます。このように1年を1か月単位にして12分割して考えます。
人数と事業所の数の計算の仕方
まず全体条件で従業員数と事業所の数を特定します。私の会社は1人だけで事業所の1つです。よって
従業員数:1人
事業所:1か所
である場合でご紹介させていただきます。
・人数比率(移動前の県1:移動後の県1)
移動前の県に1人:1
移動後の県に1人:1
・事業所比率(移動前の県11:移動後の県1)
移動前の県に11か月:11
移動後の県に1か月:1
となります。
法人住民税の法人税割:人数比率で計算
国に納める税金に3.2%(2019年)をかけて移動前後の県で人数比率で割ります。
人数比率は1:1なので1/2にします。
住民税法人税割=国の法人税額×3.2%÷2(人数割)
つまり移動前の県と移動後の県で1/2づつ分けることになります。
法人住民税の均等割:月割
法人住民税の均等割は月割で考えます。1年の住民税の均等割の額は以下であるとします。
移動前の県の法人住民税の額は21,000円(2019年)
移動後の県の法人住民税の額は21,400円(2019年)
私の場合は
移動前の県に11か月
移動後の県に1か月
いたことになります。
それを踏まえ、具体的には以下になります。
移動前の県に21,000円×11/12=19,250円≒19200円(100円未満切り捨て)
移動後の県に21,400円×1/12=1783円≒1700円(100円未満切り捨て)
事業税の場合(人数比率と事業所比率のミックス)
通常事業税は所得額に3.4%をかけたものになります。
事業税額=所得額×3.4%
これを案分していきます。具体的な金額で考えた方がわかりやすいので以下で具体的に説明していきます。
所得を240万の場合の事業税の具体的な計算方法
所得が240万であった場合で考えていきます。
①240万を人数比率で計算する分と事業所比率で計算する分にわける
まずは所得額240万を1/2にします。
人数比率で計算する分 120万
事業所比率で計算する分 120万
と所得額を1/2でわります。
②人数比率で120万を計算する
人数比率で計算する分120万を人数比率でわります。
人数比率は1:1なので120万は移動前の県と移動後の県で1/2ずつわけます。
つまり
移動前の県の人数比率分の所得:60万
移動後の県の人数比率分の所得:60万
となります。
③事業所比率で120万を計算する
事業所比率で計算する分120万を事業所比率でわります。
事業所比率は11:1なので120万は移動前の県で110万と移動後の県で10万にわかれます。
つまり
移動前の県の事業所比率分の所得:110万
移動後の県の事業所比率分の所得:10万
となります。
④移動前の県は60万+110万=170万を所得金額として計算
移動前の県は
移動前の県の人数比率分の所得:60万
移動前の県の事業所比率分の所得:110万
です。よって所得170万として事業税を計算します。
移動前の県の事業税=170万×3.4%=5万7800円
⑤移動後の県は60万+10万=70万を所得金額として計算
移動後の県は
移動後の県の人数比率分の所得:60万
移動後の県の事業所比率分の所得:10万
です。よって所得70万として事業税を計算します。
移動後の県の事業税=70万×3.4%=2万3800円
となります。
⑦事業税にはさらに地方特別税がかかってくる
事業税には地方特別税というものがかかってきます。
地方特別税=事業税額×43.2%(2019年)
です。よって
移動前の県の特別税=5万7800円×43.2%=2万4900円(100円未満切り捨て)
移動後の県の特別税=2万3800円×43.2%=1万0200円(100円未満切り捨て)
となります。
⑧最終的な事業税+地方特別税額は?
最終的なできあがりとして以下になります。
移動前の県の事業税+地方特別税=5万7800円+2万4900円=8万2700円
移動後の県の事業税+地方特別税=2万3800円+1万0200円=3万4000円
番外編:いつ引越ししたことになるのか?
私の場合9.27に引越しをしたことになりました。
これがあと4日遅く10/1に引越しをしていれば、こんな面倒な案分を作業をする必要がありませんでした。
よっていつ引越ししたことになるのか?を理解しておく必要があります。
法務局で住所変更が登記された日(≒法務局に住所変更を依頼し日)になります。
具体的には登記簿に書かれた日付が引越し日(移動日)になります。
↓のように登記簿に書かれた日になります。
実際に引越しが完了したのが10/1だと言っても通じませんので、あくまで登記簿の登記された日で判断されます。
まとめ
期中に法人の登記住所が変更されたときの法人住民税と事業税は人数比率と事業所比率と月割で計算していくことになります。
少しめんどくさい作業になってしまいますので、移動する際は移動変更の登記を出す日を期初に合わせることをおすすめします。
そうはいっても期中の半端なところで移動する場合もあると思いますのでその際の計算方法をご紹介させていただきました。
以上法人住民税・事業税の分割基準(計算の仕方)~期中で登記住所を移動した場合~でした。